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口に入れるとほろりと溶けていく『和三盆リングサブレ』はポッシュ・ドゥ・レーヴ芦屋を代表する焼き菓子です。多くの人が自分用・引き出物・贈答用にと、いろいろな目的で買い求める『和三盆リングサブレ』。1つ1つを手作りにこだわって作られるサブレの魅力について、オーナーパティシエである伊東福子さんに聞きました。
逸品にまつわる歴史やこだわり、美味しさの秘密について紹介していきます。
試行錯誤の末にたどり着いた完璧『和三盆リングサブレ』

パティシエとして活動を始めた当初に思いついたという『和三盆リングサブレ』。今ではポッシュ・ドゥ・レーヴ芦屋を代表する焼き菓子になっています。
多くの人が自分で楽しむだけでなく、贈答用としても高く評価するこのサブレ。
試行錯誤を重ねてたどり着いたこの形は、ともするとパサパサに感じられてしまうサブレの口当たりを、サクリとした食感と、ふわりと口いっぱいに香りを広げるために工夫を重ねた結果の形。
マカダミアナッツの絶妙な砕き方は、何度も試行錯誤を重ねて完成した、究極の後味を引き出すためのアクセントです。
1つ1つ丁寧に手作業で型抜きをして作られるこのサブレには、パティシエの想いの全てがこめられています。
何度も試行錯誤を繰り返してこだわりぬいた食感

和三盆リングサブレを語るとき、多くの人が口にするのが、ほろりと口の中でほどけていくその『食感』です。
子どもから高齢者まで、誰もが楽しめるこの食感が完成した背景には、何度も繰り返された試行錯誤と、人の意見を無駄にせずに向き合い続けたパティシエの矜持がありました。
先輩に試食をお願いしてひらめいたヒント
「最初に作った試作品には穴はなかったんですよ」微笑みながらパティシエは語ります。
「パティシエの先輩に食べていただいたんですが『これって口の中の水分全部持ってかれちゃうね』って言われて。それは食べづらいなって考えてできたのがこの形なんです」
パティシエの言うように、初めはサブレに穴はなかったのだそうで、口の中に入れてほどける形を試行錯誤した結果、今の穴のあいた形にたどり着いたのだとか。
理想の食感にこだわりぬく姿勢が産みだした、口にも舌にも優しいこの形でした。
1つ1つ手作業で行う型抜き
サブレのリングは、パティシエが1つ1つ丁寧な手作業で型抜きをして作られます。抜かれた丸い部分は『和三盆ボーロ』として販売され、たくさんサブレを味わいたいファンから支持されています。
「一つひとつ心をこめて」常にお菓子の先にいる人の笑顔をイメージして作ることを忘れない、パティシエとしての想いが『和三盆リングサブレ』には詰まっているのです。
なぜ和三盆なのか?

一般的なお菓子作りで使われる上白糖ではなく、あえて和三盆糖にこだわっているのにも、しっかりとした理由がありました。
日本人として、パティシエとして、想いを形にしていくストーリーを追ってみましょう。
上白糖では出せないやわらかな優しい甘み
「幼い頃に行った香川県で食べた干菓子に、和三盆が使われていたんですよ。その優しい風味が大好きで。『この日本ならではの素材を使ってお菓子を作りたい』というのがきっかけです」
和三盆独特の優しい甘みに魅せられ、日本ならではの素材で作るお菓子を考案し、お店の代表的なスイーツにまで育て上げるというのは、パティシエ冥利に尽きるお話ですね。
香川県の特産品である和三盆にこだわる
今も香川県の和三盆にこだわって使用しているのだそうで、そこには日本人パティシエとしての想いもあるようです。
「干菓子って、なかなか日常的に食べるものではないと思うので、和三盆の美味しさをより多くの方にお届けしたいなという想いもあって、サブレに使っています。香川県の特産品である和三盆を、サブレに使うことで子どもも大人も食べやすくなって、より多くの方に和三盆の美味しさを知ってもらえるといいなと思っています」
海外での修行経験もあるパティシエだからこそ、日本の良さに立ち帰ることができるのかもしれません。
ローストしたマカダミアナッツの香り

『和三盆リングサブレ』の特徴に、食べた後に鼻に抜けていくマカダミアナッツの馥郁(ふくいく)とした香りがあります。食べた人が幸せな気持ちになれるこの特徴的な香りは、どのようにして作り出されるのでしょうか。
和のテイストである和三盆と、洋の食材であるマカダミアナッツ。
このちょっと意外な組み合わせの背景には、パティシエのこだわりが詰まっていました。
店舗で行うマカダミアナッツローストの妙
「マカダミアナッツはローストしたものを使っています。ローストの加減も、何度も試してみて今の加減になりました。このロースト具合を維持するために、マカダミアナッツは敢えて生のナッツを仕入れて、店舗でローストするようにしています」
パティシエの持つ絶妙な感覚でローストされるマカダミアナッツは『和三盆リングサブレ』のいわば心臓部。
ローストされたマカダミアナッツを使わずに、店舗で丁寧にローストしたものを使うこだわりが、あの馥郁とした香りを生み出す秘密だったようです。
食感と香りを残すマカダミアナッツの砕き方
「実は最初からマカダミアナッツと決めていたわけではないんです。いくつかナッツ類を試してみて、結局マカダミアナッツが一番美味しく、香りもいいなと。
マカダミアナッツの砕き方も、何回か試してみました。細かすぎず大きすぎず、何回か試食してみて今の砕き方になった感じですね」
食べていると時折り、カリっと心地のいい歯ざわりをもたらすマカダミアナッツ。この絶妙なマカダミアナッツの砕き加減も、試行錯誤の末に見つけ出された不文律なのでした。
そして和と洋のマリアージュにたどり着く
「和の素材である和三盆と、洋の素材であるマカダミアナッツを組み合わせることで、和三盆の優しい風味と、マカダミアナッツの持つ油分がバランスよく楽しめます。和と洋がこんな風にマリアージュされるというのが『和三盆リングサブレ』の面白いところかな、という風に思っています」
和三盆とマカダミアナッツ。一見交わることのない異色の組み合わせが、こんなにも人の心をつかむスイーツに仕上がった背景には、それぞれの素材に対する想いの強さがあったことがよくわかりました。
縁をつなぐリング(円)のお菓子

『和三盆リングサブレ』は、贈答用としてよく使われるのだそうです。中でも結婚式の引き出物として使われることも多いのだとか。味はもちろんのこと、その形や素材・作り方に至るまで、支持を受け続ける背景にはパティシエとして「このお菓子を届ける人を笑顔にしたい」という強い想いがありました。
結婚式の引き出物としても多くの人が利用する理由(わけ)
リングの形から「円(縁)をつなぐお菓子」として結婚式の引き出物としても使われることの多いという『和三盆リングサブレ』
この味が好きでぜひ自分の結婚式に!という人も多いのだとか。
「誰に渡しても喜んでもらえるって自信があるから、引き出物に選びました」という声もありました。
手作りのため、大量発注の場合は事前の予約が必要なのだそう。
それでも贈答用としての大量発注が後を絶たないのは、味と品質に定評があることを物語っています。
「誰にでも喜んでもらえる手土産」という安心感
口に入れるとほろりとほどけていく食感は、子どもから高齢の方までが安心して食べられるという証でもあります。ナッツは使用していますが、卵は使っていないという製法も、安心して食べることができる理由に。
もちろん誰に送っても喜ばれる一番の理由が、その美味しさであることは間違いありません。
誰に送っても外れない物を知っているということは、それだけで安心感につながります。
食品添加物不使用・作り置きはしないという鉄則
『和三盆リングサブレ』の大きな特徴に「食品添加物不使用」があります。保存料などを使っていないということは、生地の作り置きが難しいということ。
「お客様からは見えない部分だと思いますが、そこは真摯に向き合っていきたい部分なんです。やはり味も変わってしまいますし「仕込み(生地部分)の作りおきはしない」これは今も昔も守っている方針です」
「一つひとつ丁寧に」この鉄則を守るからこその信頼。それを強く感じさせる一言でした。
最高の味を追求して完成した逸品

素材・形・組み合わせを徹底的に試行錯誤し、食べる人のことを最大限に考えた結果として生まれた『和三盆リングサブレ』。
2006年にはジャパンケーキショーの1位に当たる、連合会会長賞も受賞しています。
今回お話を聞いて、パティシエのこだわりと矜持を詰め込んだ逸品だということがよくわかりました。
「これは誰が食べても、誰に送っても喜んでもらえる」そう信じる人たちの圧倒的な支持を受けて、今日も『和三盆リングサブレ』は訪れる人をもてなしてくれます。
本記事のライター Profile
YUMI

スイーツの中でも生クリームが大好きで、生クリームを使ったスイーツには目がない。
生クリームを使ったスイーツを見つけるとついつい買ってしまうため、なんのかんのと平均月10個は生クリーム系スイーツを購入してしまうほど。
最近バタークリームにも目覚めたので、美味しいバタークリームを使ったスイーツを探索中。
編集歴は20年以上。動物や健康などの記事のほか、旅行雑誌やムックなども手がける。旅行の記事を担当することが多かったため、地方のスイーツにも明るい。 ついつい食べ過ぎてしまい、常に体重の増加と闘っているが「こればっかりはやめられない!」と開き直っている。

取材協力:パティシエ
伊東福子
兵庫県芦屋市「ポッシュ・ドゥ・レーヴ芦屋」オーナーシェフパティシエール。神戸海星女子学院大学卒業後、フランス・リッツエスコフィエへ短期留学。代官山ル・コルドンブルー東京校で製菓ディプロムを取得し、パレスホテル東京などで研鑽。「ジャパンケーキショー東京」連合会会長賞受賞。素材の個性を活かした繊細で驚きのある菓子づくりに定評があり、近年はグルテンフリーなどライフスタイルに寄り添うスイーツにも注力。日常にやさしい余韻を届けている。
本記事の監修者

ガイド・パティシエ
勝目響日
辻製菓専門学校を卒業後、五つ星ホテルやイタリア伝統菓子店、海外のホテルやカフェで腕を磨く。約100年の歴史を持つ鎌倉の老舗企業でも勤務し、日本文化への感性も大切にしている。日本とヨーロッパの技術を基盤に、現在はオーストラリアを拠点に新たな表現を追求中。

いいモノ.com編集部・スイーツ担当
ライター・カメラマン・フードスタイリスト
浅井宏美
大学院卒業後、タウン情報誌の編集者として約16年間勤務。“毎日の生活をちょっと楽しく”をテーマに、地域のグルメやイベント、スポーツ、カルチャー等の情報発信に携わる。通販事業にも関わり、地域の生産者や作り手の想いを商品とともに全国に届ける仕事も手がける。その経験を活かし、現在はフリーランスのエディター・ライター・カメラマン・フードスタイリストとして活動中。趣味はカメラ、お出かけ。愛機はNikon Z6で「そのとき・その場所で」しか撮れない写真を撮ることが好き。
※この記事に掲載されている情報は、2026年6月時点の情報です。
