「じぇらてりーあ ゆずりは」の創業者岸本洋子さんが元々営んでいたのはお寿司屋さん。そんなお寿司屋さんが4年前から作り始めた『酵素ジェラート』について、岸本さんにお話をうかがいました。
人のカラダに優しく、農家や果物そのものも大切にして作られるジェラートは、高齢者にも優しい「ケアジェラート」という側面も持っているのだとか。
ジェラートから広がる農家との縁や、日々の生活の中から生まれる思いつきを形にしていくその工程は、他者を思いやりながら「丁寧に生きる」という発想と強く結びついていました。
ただ美味しいだけで終わらない『酵素ジェラート』とは、どんなスイーツなのでしょうか。
人にも農家にも優しい、無駄のないジェラート

現代のフードシステムにおいて、持続可能な食のあり方が問われています。その一つの理想的な形として注目されているのが、大阪府羽曳野市に店を構える「じぇらてりーあ ゆずりは」が提供する『酵素ジェラート』です。
このジェラートの最大の特徴は、これまで廃棄されることの多かった「規格外フルーツ」に新たな命を吹き込み、食べる人に優しい循環型のモノづくりを実現している点にあります。
ただ環境に配慮しているだけでなく、スイーツとしての美味しさを追求した結果、この独自の「発酵」というアプローチにたどり着いたのだそうです。
発酵ジェラートが美味しい理由は、果物を単にミキサーにかけるのではなく、数か月間じっくりと発酵させて作る自家製の「発酵フルーツシロップ」をベースにしているからです。
発酵のプロセスを経ることで、果物の風味は壊さず、角が取れたまろやかな甘みが最大限に引き出され、通常のジェラートでは出せない爽やかな酸味と深みのある立体的な味わいが生まれます。
一口食べると、まろやかな甘みと、爽やかなフルーツの香りに驚きます。フルーツが本来持っている濃厚な香りではなく、発酵させたことによって丸みを帯びた優しい香りと甘さを楽しむことのできるジェラート。
一度食べるとクセになる『酵素ジェラート』にはそんな不思議な魅力があります。
果物をつけ込み、発酵させて作るフルーツシロップ

じぇらてりーあ ゆずりはの美味しさの核となるのが、時間をかけて丁寧に漬け込まれる特製のフルーツシロップです。全て人の手で行われる漬け込み作業によって、甜菜糖とミネラル水にフルーツが漬け込まれます。
果物が持つ天然の酵母の力を生かし、余計なものを一切加えずに2〜3か月かけてじっくりと発酵を進めることで、素材の風味が凝縮された濃厚なシロップが完成します。このシロップこそが、ジェラートの味わいを決定づける命とも言える存在です。
規格外フルーツで作る発酵シロップは全て手作業で漬ける
シロップには、味は抜群に美味しいにもかかわらず、形やサイズのせいで市場に出せない規格外フルーツたちが使われることが多いのだと岸本さんは話します。
農家から引き受けたこれらの果物は、状態を人の目で厳しくチェックしながら、全て人の手作業によって丁寧に皮を剥いたり切り分けたりして漬け込まれます。
機械に頼らない完全なハンドメイドのシロップだからこそ、果物の繊細なコンディションに合わせた最適な発酵管理が可能になるのです。
上白糖は一切使わず、甜菜糖とミネラル水とフルーツだけ
カラダに不要な負担をかけないため、シロップの原材料には徹底的にこだわっています。
一般的に安価で使われやすい上白糖(白砂糖)は一切使用せず、お腹を冷やしにくくまろやかな甘みが特徴の「甜菜糖」と、厳選された「ミネラル水」、そして「フルーツ」のみで仕込みます。
約3か月もの間じっくりと寝かせることで、甜菜糖の優しい甘さと果物の酸味が完璧に調和します。
漬け込んだフルーツがはいっているから香り高いジェラートに
このジェラートの贅沢な風味をさらに高めているのが、シロップを作る過程でしっかりと漬け込まれた「発酵フルーツそのもの」を贅沢に混ぜ込んでいる点です。
発酵によって組織が柔らかくなり、香りが極限まで高まった果実がジェラート全体に行き渡るため、口に入れた瞬間にフレッシュな果香が驚くほど華やかに広がります。
フルーツを使ったジェラートはサクサクとしたシャーベット状で、口に入れた瞬間に広がるフルーツの香りと、口の中で溶けていく落ち着いた甘みが喉を潤してくれます。
旬のフルーツを使っているので、ジェラートの種類は季節によって変わります。通年作っているミルクのジェラートには「発酵フルーツシロップ」は使われていませんが、卵を使わないアレルギー対応のジェラートになっています。
ミルクの濃厚な味わいはありながら、後味はさっぱりとしたジェラートに仕上げられています。ミルクのほかにも、黒胡麻・きなこなど、通年のジェラートも豊富にそろっています。
季節によって変わるフルーツの『酵素ジェラート』は低カロリー
フルーツのジェラートは採れたてのフルーツを漬け込んで作られるので、季節によって楽しめる味が変わりますが、どのフルーツのジェラートも、まろやかな香りを楽しめるのが特徴です。
しかも発酵フルーツシロップを使った『酵素ジェラート』は1つ50kcal前後と低カロリーなので、罪悪感なく食べられるのも魅力!
フルーツの元々持っている強い香りではなく、発酵させることによってまろやかな香りになっている分、フルーツが苦手な人でも美味しく味わえるため、普段はちょっと苦手に思えるフルーツにもぜひチャレンジしてください。
作った果物が全て出荷できるわけではない農家のジレンマ

日本の農業を支える果樹農家は、常に厳しい現実に直面しています。天候や自然の気まぐれと闘いながら、どれだけ愛情を込めて最高品質の果物を育てても、すべてを正規の商品として出荷できるわけではないという現実。
見た目のわずかな違いだけで価値を否定されてしまうという、農家が抱える深いジレンマは大きな課題となっています。
房から外れたシャインマスカットの甘さ
高級フルーツの代名詞であるシャインマスカットも例外ではありません。あるときシャインマスカットの農家から、輸送中や収穫の際に自重や衝撃で、房からポロリと粒が外れてしまったシャインマスカットが岸本さんの元に届いたのだそうです。
岸本さんが届いたサインマスカットの粒を洗って仕込みをしていたところに娘さんが通りかかり、外れてしまった「粒」を口に放り込んで驚きの声をあげたのだとか。
「何⁉︎これ!今まで食べたシャインマスカットの中で一番甘くて美味しい!」
十分に木で熟したことで房から外れた粒は、その甘みを充分に蓄えているのですから、美味しくないわけがありません。そんなシャインマスカットを発酵させたフルーツシロップを使ったジェラートが、最高の味わいを作り出すのは想像に難くないでしょう。
佐藤錦として売られるさくらんぼは生産量のおよそ6割
初夏の味覚として人気のさくらんぼ「佐藤錦」は、非常にデリケートな果物です。実は、天候による色づきのムラや、わずかな実割れ、サイズが規格に満たないなどの理由で、全体の約4割近くが非正規品となってしまうのだそう。
さくらんぼが果物の中で一番好きだという岸本さんの元に、山形の農家から佐藤錦の規格外品も届くのだそうです。製品としてお店の棚に並ぶのは生産量のおよそ6割にとどまり、残りの4割が行き場を失ってしまうのはもったいない!
3か月後にはさくらんぼの「発酵フルーツシロップ」を使ったジェラートが、「じぇらてりーあ ゆずりは」に並びます。
農家の窮地も救う「発酵フルーツシロップ」
そんな農家たちの窮地を救う救世主となっているのが、「じぇらてりーあ ゆずりは」の「発酵フルーツシロップ」というアプローチです。
傷やサイズ、房落ちを理由に廃棄されるはずだった果物を譲り受け、価値あるシロップへとアップサイクルし、シロップの一部を農家に還元。残ったシロップでジェラートを作っています。
農家に還元された「発酵フルーツシロップ」は、農家の地元で発酵フルーツシロップとして販売されていることもあるそうです。この動きが農家の労働価値を守り、持続可能な農業経営を支える力強い基盤となっています。
発酵させたフルーツシロップは健康な食生活をサポート

発酵という日本の伝統的な知恵を取り入れたシロップは、単なる甘味料ではなく、私たちの身体を内側からいたわる機能性を持っています。
微生物の働きによって糖質や栄養素があらかじめ分解されているため、消化にかかる負担が少なく、日々の健やかな食生活を優しくサポートしてくれます。
人にも農家にも果物にも優しいジェラート
「じぇらてりーあ ゆずりは」が目指すのは、誰もが笑顔になれる「三方良し」のスイーツです。農家は無駄なく果物を使うことができて喜び、果物はその命と美味しさを全うでき、消費者は無添加で罪悪感のない健康的なおやつを楽しめます。
この優しい循環ができているからこそ、食べる人の心まで温かく満たしてくれるのでしょう。
『酵素ジェラート』は高齢者にも食べやすい
年齢を重ねるにつれて、胃腸の消化吸収能力は徐々に低下していき、冷たいアイスクリームを食べるとお腹を壊しやすくなる高齢者の方も少なくありません。
しかし、甜菜糖とミネラル水で丁寧に発酵させた酵素ジェラートは、腸内環境を整える手助けをしてくれます。また、シニア世代の方でも無理なく美味しく食べられるため、食べることを楽しむことができるのです。
ケアジェラートという考え方
以前岸本さんの母上を看取られた際、最後に食べたいとおっしゃったものがバニラアイスだったのだそうです。
「ああ、こういうものだと、食欲のないときでも食べられるのかもしれない」岸本さんのその想いから考案したのが「ケアジェラート」という新しい福祉の視点です。
これは、咀嚼(そしゃく)機能が衰えた方や、食事制限がある方、病気療養中の方でも、安心して口にできる冷涼な栄養食・嗜好品としてのジェラートを意味します。
現在も、そういった栄養価を重視して作られたゼリー状の食品があるそうなのですが、なかなか「美味しく味わえて栄養価が高いもの」というのは難しいのだとか。岸本さんの作る「ケアジェラート」は福祉関係の方にも「美味しい!」と高評価で、近日高齢者施設で提供される予定もあるそうです。
「生きるための食事が苦行になってはいけない」という信念
岸本さんは「食い倒れの街」大阪で寿司店を営むほど、食と味にこだわりがある方です。そんな岸本さんは「生きるための食事が苦行になってはいけないと思うんです」と話します。
「食べることは楽しいこと。そうでなくちゃ」その想いが生み出す「ケアジェラート」や、上白糖を使わない「発酵フルーツシロップ」が人に優しく、自然や環境にも優しいのはその信念があるからなのでしょう。
そこには、どんな状態にある人でも「美味しい!」と目を輝かせて味わえる、本物のスイーツを届けたいという想いが込められています。
誰もが美味しく食べられるジェラートという理想型

「じぇらてりーあ ゆずりは」の「酵素ジェラート」が目指す最終的なゴールは、年齢・健康状態・食の制限に関わらず「誰もが同じテーブルで、同じように笑顔で美味しく食べられる」という理想の食卓の実現です。
卵や小麦を使用せず、無添加の自然派製法で仕上げられたジェラートは、アレルギーを持つ子どもから、健康志向の大人、そして食事のケアが必要な高齢者まで、あらゆる人を優しく迎え入れます。
一口食べれば、発酵が生み出す豊かな果実味と優しい甘さが広がり、身体への罪悪感も残りません。農家を救い、地球の資源を守り、人々の健康をケアするこのジェラートは、未来のスイーツの理想的なあり方を示してくれているのかもしれません。
※この記事に掲載されている情報は、2026年8月時点の情報です。
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本記事のライター Profile
YUMI

スイーツの中でも生クリームが大好きで、生クリームを使ったスイーツには目がない。
生クリームを使ったスイーツを見つけるとついつい買ってしまうため、なんのかんのと平均月10個は生クリーム系スイーツを購入してしまうほど。
最近バタークリームにも目覚めたので、美味しいバタークリームを使ったスイーツを探索中。
編集歴は20年以上。動物や健康などの記事のほか、旅行雑誌やムックなども手がける。国内旅行の記事を担当することが多かったため、地方のスイーツにも明るい。 つい食べ過ぎてしまい、常に体重の増加と闘っている。
本記事の監修者

監修者・パティシエ
伊東福子
兵庫県芦屋市「ポッシュ・ドゥ・レーヴ芦屋」オーナーシェフパティシエール。神戸海星女子学院大学卒業後、フランス・リッツエスコフィエへ短期留学。代官山ル・コルドンブルー東京校で製菓ディプロムを取得し、パレスホテル東京などで研鑽。「ジャパンケーキショー東京」連合会会長賞受賞。素材の個性を活かした繊細で驚きのある菓子づくりに定評があり、近年はグルテンフリーなどライフスタイルに寄り添うスイーツにも注力。日常にやさしい余韻を届けている。

ガイド・パティシエ
勝目響日
辻製菓専門学校を卒業後、五つ星ホテルやイタリア伝統菓子店、海外のホテルやカフェで腕を磨く。約100年の歴史を持つ鎌倉の老舗企業でも勤務し、日本文化への感性も大切にしている。日本とヨーロッパの技術を基盤に、現在はオーストラリアを拠点に新たな表現を追求中。

いいモノ.com編集部・スイーツ担当
ライター・カメラマン・フードスタイリスト
浅井宏美
大学院卒業後、タウン情報誌の編集者として約16年間勤務。“毎日の生活をちょっと楽しく”をテーマに、地域のグルメやイベント、スポーツ、カルチャー等の情報発信に携わる。通販事業にも関わり、地域の生産者や作り手の想いを商品とともに全国に届ける仕事も手がける。その経験を活かし、現在はフリーランスのエディター・ライター・カメラマン・フードスタイリストとして活動中。趣味はカメラ、お出かけ。愛機はNikon Z6で「そのとき・その場所で」しか撮れない写真を撮ることが好き。
