広島県の福山駅近くに店舗を構えて150年余年。地元で愛され続ける和菓子店があります。
明治5年に創業した「大和屋本店」のスイーツの中で、柚餅やカステラなど創業以来の人気商品に加え、人気を集めているのが『ブランデーケーキ』です。
「大和屋本店」では、カステラとは別に『ブランデーケーキ』用にパウンドケーキを用意して、1つ1つを人の手で丁寧に、ハケを使ってブランデーを塗り重ねて『ブランデーケーキ』を作っています。
一度食べると忘れられないような、豊かな香りと味わいを持つ『ブランデーケーキ』。
和菓子の店でどのようにして『ブランデーケーキ』が作られるようになったのか、そのブランデーケーキ作りの裏側など、なかなか語られることのない製造過程まで、現在の「大和屋本店」を守る塩出晶子さんにお話をうかがいました。
口に入れた瞬間に広がる芳醇なブランデーの香り

「大和屋本店」の作る『ブランデーケーキ』の最大の特長は、口に入れるとじわりと染み出すほど漬け込まれたブランデーの芳醇な香りです。一度食べるとクセになるような香りと味わいに、虜になる人が続出するほど。
なんとなくパサつくイメージのパウンドケーキのイメージを覆す、しっとりを超えて口の中でふわりと溶けるような『ブランデーケーキ』。
「この味を知ってしまったら他のブランデーケーキが食べられなくなってしまうかもしれない」と思ってしまうほどの唯一無二の味わいです。
それもそのはず「大和屋本店」の『ブランデーケーキ』は、素材に対するこだわりはもちろん、パウンドケーキ1本1本に職人が丁寧にハケを使ってブランデーを塗り重ねて作られています。
またブランデーを塗ったあと、温度変化の少ない地下に作られた室で1か月熟成させてから出荷する手間のかけ方など、なかなか真似のできない丁寧な生産体制の賜物として『ブランデーケーキ』は作られているのです。
およそ45年前から作り続けているという『ブランデーケーキ』。機械化が進む現代においても、材料や製造工程は45年前から変わることなく、手間暇をかけて作られているのだと塩出さんは話します。
明治5年創業。地元福山で愛され続ける老舗の和菓子

「大和屋本店」は福山駅近くで店舗を構える、創業から150年以上を数える老舗です。
日本の歴史を振り返ってみても、激動の時代だった150年を乗り越えてこられたのは、地元で愛され続けてきたからにほかなりません。
ここでは、福山で脈々と続く「大和屋本店」の和菓子店としての歴史を紐解いてみましょう。
のちの『ブランデーケーキ』にもつながるカステラは創業当時から
およそ45年前から作り始めたという『ブランデーケーキ』ですが、『カステラ』は創業当時から作られてきた一品です。
『カステラ』は創業以来150年間作り方を変えず、いまでもかたくなに手焼きの製法を守り続けています。「しっとりしていて美味しい」という口コミも多く、この製造方法は『ブランデーケーキ』にも活かされています。
「大和屋本店」が愚直なまでにこだわり、守り続けている「変わらぬ味」が、愛され続けている秘密なのでしょう。
「変わらぬ味」が愛され続ける一方で、『ブランデーケーキ』のように150年という長い歴史の中で「新しく生まれ、地元に愛されている味」もあります。これは「大和屋本店」が、長い歴史を刻み続けている理由の1つにもなっています。
四季折々のお菓子を作り続けた150年
和菓子店として、四季折々に和菓子も作っています。「大和屋本店」の朝の仕事はまず餡作りから。こし餡・つぶ餡・白餡など、餡を作ることから始まるのだとか。
地元で愛され続けた和菓子の基本形が今も守られ続けています。
「大和屋本店」は日本画家の塩出秀雄氏の生家でもあり、2022年には「大和屋本店」創業150周年と塩出英雄氏生誕110周年を記念して、コラボ商品も発売されました。
塩出英雄氏は福山城も描いており、福山城の築城400年を記念して福山市が選んだ「福山ゆかりの先人」の1人。地元との結びつきの強さを物語っているエピソードであり、福山市に根づいた企業としての一面が垣間見えます。
和菓子のお店が『ブランデーケーキ』を作るという発想

和菓子店として100年以上の歴史を刻む「大和屋本店」が、なぜ『ブランデーケーキ』という、いわば「洋菓子」を作ることになったのでしょうか?
また今まで作っていた和菓子とは違うお菓子の制作を思い立ったきっかけや、今や「大和屋本店」を代表する人気商品になった『ブランデーケーキ』の製造工程の裏側について塩出さんに話してもらいました。
きっかけは45年前に流行した『ブランデーケーキ』
和菓子を作り続けた老舗で、どうして『ブランデーケーキ』を作るようになったのか、塩出さんに聞いてみると、意外な答えが。
「45年ほど前にブランデーケーキが流行した時期があったんですよ。それでブランデーケーキも作ってみようかと」
それまで子どもの食べ物だった「おやつ」に、「ちょっと高級感のある大人のおやつ」としてブランデーケーキが浸透した時期があったのだそう。
老舗として実直に昔ながらの製法を守り続けてきた老舗が、流行を追いかけるように作り始めた『ブランデーケーキ』。今や「大和屋本店」を代表するような人気商品に育っています。
このようなもの作りに対する柔軟性も、老舗として150年続く理由なのかもしれません。
カステラではないパウンドケーキを作る
「大和屋本店」創業当時から作り続けている人気商品に『カステラ』があります。しかし『ブランデーケーキ』の土台になっているのは「パウンドケーキ」なのだそう。
そもそも「カステラ」と「パウンドケーキ」の違いは「バター」を使うか使わないかで、小麦粉を使って焼くお菓子という意味では共通点も。
『カステラ』を150年以上、手焼きで焼き続けている「大和屋本店」だからこそ作れる、パウンドケーキの妙味がそこにはあります。
パウンドケーキを焼く際には、日によって変わる温度や湿度を見極め、火加減を変えてムラなく焼き上げるように調整しているのだと話す塩出さん。
ここにもお菓子作りに真摯に向き合う「大和屋本店」の、150年続くもの作りの本質が見えてきます。
45年前から変わらぬ素材・製法を守り続ける

「材料は45年前に作り始めた当初から変えていません。昔ながらの味を大切にして作り続けています」塩出さんは話します。
職人の手でじっくりと焼き上げたパウンドケーキに、1本1本VSOPのブランデーを使って特別配合したシロップをたっぷりと手塗りするのだそうです。
その結果、染み出すほどのしっとり感のあるブランデーケーキが出来上がるのだとか。
ちなみに、「大和屋本店」ではプレーンタイプの『ブランデーケーキ』と、チョコレートタイプの『ブランデーケーキ』が用意されています。
チョコレートタイプにはクベールチュールチョコレートを使っており、プレーンタイプよりも油分が多いため、ブランデーシロップの塗布には時間をかけているのだそう。
この丁寧な一手間が、愛され続ける商品を作り上げているのでしょう。
使用するブランデーはVSOP
「大和屋本店」の『ブランデーケーキ』を一口食べると、口の中にじゅわっとブランデーの香りと味が広がります。この香りを決定づけているのが「大和屋本店」こだわりのVSOPです。
パウンドケーキの生地にもブランデーを加えて焼き上げ、そこに丁寧にはけで1本1本、VSOPを使って特別に配合されたブランデーシロップを塗っていきます。
ここで使われるブランデーシロップにもVSOPが使われているからこそ、「大和屋本店」の『ブランデーケーキ』の馥郁(ふくいく)とした香りが楽しめるのです。
1つ1つを手作業で作る丁寧な仕事の集大成

「大和屋本店」の150年を支えているのが、手作業で行われるもの作りです。
ここでは、機械化が進む現代においても、愚直なまでに手作りにこだわる「大和屋本店」ならではのもの作りについて聞いてみました。
パウンドケーキの焼き加減も日々人の目と手を入れて
パウンドケーキの生地にもブランデーを加え、毎日変わる気温や湿度に合わせて、職人が火加減を見ながら焼き上げられるパウンドケーキ。
ここにも職人の目と熟練の感覚が活かされています。
気温と火加減の関係は、数値化して「これが正解」とは決められないもの。それを熟練の職人技で守り続けているからこそ、この味わいが生まれます。
パウンドケーキの生地に加えられるブランデー。その配合加減が、ブランデーの香りは芳醇であるのに、決してアルコールの匂いに邪魔されず、ブランデーの甘く馥郁とした香りと味わいを生み出す秘密なのでしょう。
ブランデーは焼き上がったパウンドケーキ1本1本に手塗り
焼き上がったパウンドケーキには1本1本職人の手作業でブランデーが塗られていきます。
1回ではなく重ねて塗ることで、たっぷりとブランデーを染み込ませるのだそうです。
ここでも職人の丁寧な手仕事の妙味がいかんなく発揮されています。目で見て、その染み込み具合を判断するのはまさに職人技。45年間同じ製法を守り続けてきたからこそできる技が光ります。
温度変化の少ない地下には専用の熟成室
たっぷりとブランデーを塗布したあと、ブランデーをしっかりと染み込ませるために用意された熟成室で1か月ほど寝かせてから発送されるのだと塩出さんは話します。
「温度変化の少ない地下に、温度管理をしっかりとした『ブランデーケーキ』専用の部屋があり、そこで一定期間寝かせてから販売します」
塩出さんのお話からもわかるように『ブランデーケーキ』専用の熟成室があるのだそう。多くの菓子店ではブランデーケーキの熟成にそこまでの手間はかけないことが多く、専用の熟成室で熟成させるのは「大和屋本店」のこだわりです。
『ブランデーケーキ』1本を作るのに、ここまでの手間をかけているからこそ、あの味が出せるのだということがよくわかりました。
口に入れると『ブランデーケーキ』の概念が変わる逸品

「大和屋本店」の『ブランデーケーキ』はなぜ美味しいのか?その理由が塩出さんのお話からよくわかりました。ブランデーケーキは好きではなかったという人でさえ虜にする『ブランデーケーキ』。
その昔、まだネット通販が普及する前から、わざわざ県外から取り寄せる人が続出していた『ブランデーケーキ』には、それだけの手間と時間がかけられて作られていました。
口に入れるとじゅわりとブランデーが染み出すようなしっとり感。それでいて決してアルコールの匂いが気になるわけではなく、ゆっくりと口の中でとけていくパウンドケーキの余韻を楽しみながら味わう時間はまさに至福のとき。
紅茶やコーヒーと合うのはもちろん、寒い日には暖かいココアやホットミルクと一緒に楽しむのもおすすめです。
自分へのご褒美にはもちろん、親しい人への贈り物としても喜ばれ、常温で1か月と日持ちもする万能なお菓子。
福山まで行くことはできなくても、取り寄せて味わってみたくなる逸品です。
※この記事に掲載されている情報は、2026年9月25日時点の情報です
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本記事のライター Profile
YUMI

スイーツの中でも生クリームが大好きで、生クリームを使ったスイーツには目がない。
生クリームを使ったスイーツを見つけるとついつい買ってしまうため、なんのかんのと平均月10個は生クリーム系スイーツを購入してしまうほど。
最近バタークリームにも目覚めたので、美味しいバタークリームを使ったスイーツを探索中。
編集歴は20年以上。動物や健康などの記事のほか、旅行雑誌やムックなども手がける。国内旅行の記事を担当することが多かったため、地方のスイーツにも明るい。 つい食べ過ぎてしまい、常に体重の増加と闘っている。
本記事の監修者

監修者・パティシエ
伊東福子
兵庫県芦屋市「ポッシュ・ドゥ・レーヴ芦屋」オーナーシェフパティシエール。神戸海星女子学院大学卒業後、フランス・リッツエスコフィエへ短期留学。代官山ル・コルドンブルー東京校で製菓ディプロムを取得し、パレスホテル東京などで研鑽。「ジャパンケーキショー東京」連合会会長賞受賞。素材の個性を活かした繊細で驚きのある菓子づくりに定評があり、近年はグルテンフリーなどライフスタイルに寄り添うスイーツにも注力。日常にやさしい余韻を届けている。

ガイド・パティシエ
勝目響日
辻製菓専門学校を卒業後、五つ星ホテルやイタリア伝統菓子店、海外のホテルやカフェで腕を磨く。約100年の歴史を持つ鎌倉の老舗企業でも勤務し、日本文化への感性も大切にしている。日本とヨーロッパの技術を基盤に、現在はオーストラリアを拠点に新たな表現を追求中。

いいモノ.com編集部・スイーツ担当
ライター・カメラマン・フードスタイリスト
浅井宏美
大学院卒業後、タウン情報誌の編集者として約16年間勤務。“毎日の生活をちょっと楽しく”をテーマに、地域のグルメやイベント、スポーツ、カルチャー等の情報発信に携わる。通販事業にも関わり、地域の生産者や作り手の想いを商品とともに全国に届ける仕事も手がける。その経験を活かし、現在はフリーランスのエディター・ライター・カメラマン・フードスタイリストとして活動中。趣味はカメラ、お出かけ。愛機はNikon Z6で「そのとき・その場所で」しか撮れない写真を撮ることが好き。
