長崎を代表する銘菓として知られるカステラ。その歴史を語るうえで欠かせない老舗のひとつが、天和元年(1681年)創業の「松翁軒」です。
340余年にわたり菓子づくりを続け、長崎の歴史とともに歩んできました。伝統の製法を受け継ぎながら、熟練の職人が一枚ずつ焼き上げるカステラは、しっとりとやわらかな口当たりが特徴。
卵や小麦粉・水飴・ザラメ糖など、素材にもこだわり、シンプルだからこそ奥深い味わいを生み出しています。長い歴史の中で磨かれてきた、松翁軒ならではのカステラの魅力に迫ります。
長崎で愛され続ける「松翁軒」の『カステラ』
引用元:松翁軒
松翁軒のカステラは時代を超えて選ばれ続ける逸品です。この『カステラ』の魅力は、伝統を守りながらも「美味しさ」の本質を決して譲らない、愚直なまでのこだわりにあります。
最大のこだわりは、機械による大量生産に頼らず、一人の職人が最初から最後まで焼き上げる「一枚手焼き」の伝統製法です。その日の気候に合わせて繊細に火加減を調整し、職人の目と手で最高の状態へ仕上げています。
さらに、島原産の新鮮な卵や、保水性に優れた特別配合の「カステラ専用小麦粉」など、選び抜かれた5つの厳選素材が、他にはない唯一無二のしっとり感と濃厚なコクを生み出します。
江戸時代から340年以上続く歴史と格式、そして職人技と厳選素材が織りなす「極上の口どけ」があるからこそ、「松翁軒」のカステラは大切な人への贈り物や自分へのご褒美として、今も多くの人に愛され続けているのです。
天和元年(1681年)創業、歴史が紡ぐ「松翁軒」の歩み
引用元:松翁軒
天和元年(1681年)に長崎で創業した「松翁軒」は、340余年にわたり菓子づくりを続けてきた老舗です。
長崎の歴史とともに歩みながら、カステラをはじめとする菓子文化を受け継いできました。一方で、伝統を守るだけではなく、新しい素材や発想も取り入れてきた松翁軒。
長い年月の中で培われた歴史と、時代に合わせて変化を重ねてきた歩みが、現在の菓子づくりへとつながっています。
江戸時代から続く長崎カステラの「本家」としての誇り
天和元年(1681年)、初代・山口屋貞助が長崎市本大工町に店を構え、砂糖漬けやカステラなどの菓子づくりを始めたことから、松翁軒の歴史は始まりました。
以来、歴代が菓子づくりに励み、340余年にわたってその歩みを重ねています。長崎では、海外から伝わったカステラが独自の菓子として発展していきました。松翁軒もまた、その土地の文化とともに歴史を刻んできた老舗のひとつ。
長崎カステラの歴史をたどることは、松翁軒が歩んできた道のりを知ることにもつながります。
独自の進化を遂げた「和洋折衷」の菓子づくり
伝統を受け継ぐ一方で、新しい素材や発想を取り入れてきたのも松翁軒の歩みです。
明治中期には、八代目・貞次郎が当時珍重されていたチョコレートに着目。家伝のカステラにチョコレートの味を加え、「チョコラーテ」を創り出しました。
昔から受け継がれてきたカステラに異国の素材を組み合わせることで、新たな味わいを生み出したのです。伝統そのものを変えるのではなく、そこに新しいものを取り入れていく柔軟な姿勢は、長い歴史を持つ「松翁軒」の菓子づくりを語るうえでも印象的です。
極上の食感を生み出す「一人の職人が焼き上げる」こだわり
引用元:松翁軒
松翁軒のカステラのおいしさを支えているのが、職人の経験と感覚を生かした焼き上げです。
生地は同じように見えても、その日の天候や気温によって状態が変わるため、細かな調整が欠かせません。長年受け継がれてきた製法のもと、一枚ごとの状態に向き合いながら焼き上げることで、しっとりとやわらかな食感へと導いています。
機械任せにしない「一枚手焼き」の伝統製法
松翁軒では、熟練した職人がそれぞれの窯を受け持ち、一枚ずつカステラを焼き上げています。
生地は職人の手で丁寧に混ぜ合わせ、適度に空気を含ませて木枠へ流し込みます。さらに、生地づくりを担当した職人自らが窯入れを行い、約50分かけて焼き上げます。
焼いている途中にも生地を丹念に混ぜ合わせる工程があり、ザラメを均等にしながら気泡を整えます。その日の天候や気温によって製法も微妙に変わるため、職人の経験と勘が生きる手焼きならではの工程です。
素材への妥協なき探求
松翁軒のカステラづくりでは、素材を選ぶことも職人の大切な仕事のひとつです。
カステラは使う材料がシンプルだからこそ、素材の状態や組み合わせが焼き上がりに大きく影響します。
カステラを作るだけだけに配合された特別配合の「カステラ専用小麦粉」を使い、国内産の米飴を使うなど、素材には特にこだわりを持っています。
長年の菓子づくりで培った経験をもとに、味わいだけでなく、食感や焼き上がりまで考えながら素材を選択。一つひとつを丁寧に見極め、目指すカステラの味わいへとつなげています。
美味しさを引き立てる「ザラメ糖」の絶妙な食感
長崎カステラらしい食感を生み出すうえで、ザラメ糖も欠かせない存在です。
松翁軒では、ザラメを生地の下に敷くのではなく、生地と一緒に焼き上げています。焼成中に生地に溶け切らず沈んだザラメが底に残り、口にしたときにシャリッとした粒感を感じられるのが特徴です。
さらに、純度の高いザラメを使うことで、上白糖だけでは出せない上品な甘味に。ふんわりとした生地の中に異なる食感が加わり、ひと口ごとのアクセントになっています。
極上の味わいを支える「松翁軒」カステラの素材へのこだわり
引用元:松翁軒
カステラは、卵や小麦粉、砂糖、水飴、ザラメなど、シンプルな素材からつくられるお菓子です。
それぞれの素材には、生地の食感や甘み、しっとり感など、異なる役割があります。松翁軒では、カステラ専用の小麦粉や新鮮な卵、ザラメ、国内産の餅米飴などを用い、それぞれの持ち味を生かしています。
素材ごとの役割を知ることで、シンプルなカステラに込められた工夫もより伝わってきます。
普通の薄力粉では焼き上がらない、特別配合の「カステラ専用小麦粉」
松翁軒では、一般的な薄力粉ではなく、カステラ専用に配合された特殊な小麦粉を使用しています。
大きな特徴は、保水性に優れていること。生地に含まれる水分を保ちやすいため、焼き上がりはふんわりとしながら、もっちりとした食感に仕上がります。
小麦粉は生地の土台となる素材だからこそ、どのような焼き上がりを目指すかに合わせた選択が重要です。長年の菓子づくりの中でたどり着いた専用粉が、松翁軒らしいやわらかな食感を支えています。
毎朝直送される、島原半島の契約農家が育んだ「新鮮な卵」
カステラの味わいや焼き上がりを左右する卵にも、細やかなこだわりがあります。
使用する卵は、島原半島の契約農家から毎朝直送されるもの。新鮮さや味だけを見るのではなく、職人が生地をつくる際の扱いやすさにも関わる温度、さらに黄身の色まで厳しく管理しています。
卵はカステラの風味や色合いにも関わる大切な素材。毎日の状態を細かく確かめることで、安定した焼き上がりにつなげています。
素材の鮮度だけでなく、その状態まで見極める姿勢が、松翁軒の丁寧な菓子づくりを支えているのです。
上品な甘みと、溶け残りが沈んで生まれる「純度の高いザラメ糖」
長崎カステラには欠かせないザラメも、味わいを左右する大切な素材です。
松翁軒では、純度の高いザラメを使い、上白糖だけでは生まれない上品な甘味を引き出しています。特徴的なのは、ザラメを生地の底に敷くのではなく、生地と一緒に焼き上げること。
焼いている途中で溶け切らなかったザラメが生地の下に沈み、焼き上がったあとに粒として残ります。
ふんわりとした生地を味わう中で、底からシャリッとした食感が加わることで、カステラの甘みと食感にアクセントが生まれます。
しっとり感と豊かな口どけを極める「国内産の餅米飴(水飴)」
水飴も、松翁軒のカステラのしっとりとした食感を支える素材のひとつです。
使用しているのは、色がよく、甘味に濁りがない国内産の餅米飴。水飴を加えることで、生地はしっとりと焼き上がり、時間が経つことによる生地の劣化も防ぎます。
そもそも伝来当時のカステラは、現在よりもパンに近い食感だったとされます。
そこに水飴を加えるという長崎の菓子職人たちの工夫が重ねられ、現在のようなしっとりとした長崎カステラへと発展しました。長崎の菓子文化に根付いた工夫が、今の食感にもつながっています。
歴史と伝統に裏打ちされた最高峰の味わい
引用元:松翁軒
天和元年(1681年)の創業から340余年。松翁軒のカステラは、長い歴史の中で受け継がれてきた製法と、時代に合わせた工夫によって、現在の味わいへと育まれてきました。職人が一枚ずつ焼き上げる手仕事を守りながら、素材についても探求を重ね、カステラに適した小麦粉や卵、水飴、ザラメなどを選び続けています。
カステラというシンプルなお菓子だからこそ、素材の選び方や焼き方の違いが味わいに表れます。長崎で340余年にわたって菓子づくりを続けてきた松翁軒だからこそ生まれる、伝統と職人の技が息づく一品。
長崎を訪れた際のお土産としてはもちろん、普段のお茶の時間に味わいながら、その長い歴史に思いを馳せるのもよいでしょう。
※この記事に掲載されている情報は、2026年9月時点の情報です。
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本日のライターProfile
川田 麻実

食について15年以上学び、出産を機に栄養の大切さを実感し、栄養士として8年活動しています。これまで栄養学・幼児食・オーガニック・フードコーディネートなど、さまざまな視点から食を学んできました。
素材や品質にこだわった食品を見つけ、その魅力を伝えることが好きです。こどもの栄養相談や食育イベントの開催、食・子育てWebメディアでの執筆を経験。専門知識と暮らし目線の両方から商品の魅力を分かりやすく伝え、「食べておいしい、知ってうれしい」そんな良いものとの出会いを届けることを大切にしています。
本記事の監修者

監修者・パティシエ
伊東福子
兵庫県芦屋市「ポッシュ・ドゥ・レーヴ芦屋」オーナーシェフパティシエール。神戸海星女子学院大学卒業後、フランス・リッツエスコフィエへ短期留学。代官山ル・コルドンブルー東京校で製菓ディプロムを取得し、パレスホテル東京などで研鑽。「ジャパンケーキショー東京」連合会会長賞受賞。素材の個性を活かした繊細で驚きのある菓子づくりに定評があり、近年はグルテンフリーなどライフスタイルに寄り添うスイーツにも注力。日常にやさしい余韻を届けている。

ガイド・パティシエ
勝目響日
辻製菓専門学校を卒業後、五つ星ホテルやイタリア伝統菓子店、海外のホテルやカフェで腕を磨く。約100年の歴史を持つ鎌倉の老舗企業でも勤務し、日本文化への感性も大切にしている。日本とヨーロッパの技術を基盤に、現在はオーストラリアを拠点に新たな表現を追求中。

いいモノ.com編集部・スイーツ担当
ライター・カメラマン・フードスタイリスト
浅井宏美
大学院卒業後、タウン情報誌の編集者として約16年間勤務。“毎日の生活をちょっと楽しく”をテーマに、地域のグルメやイベント、スポーツ、カルチャー等の情報発信に携わる。通販事業にも関わり、地域の生産者や作り手の想いを商品とともに全国に届ける仕事も手がける。その経験を活かし、現在はフリーランスのエディター・ライター・カメラマン・フードスタイリストとして活動中。趣味はカメラ、お出かけ。愛機はNikon Z6で「そのとき・その場所で」しか撮れない写真を撮ることが好き。





